不安だらけの人生だった 前編
夏の香りがすると思い出すのは、私がまだ社会に出たての頃。
新しいシチュエーションに対する気持ちの表現で「不安と期待」とよく言うが、私にとっては不安と恐怖しかなかった。
今は、不安ともうまく付き合って、安心の土台と希望という相棒も得た。
そんな話をひとつ、綴ってみたいと思った。
小さい頃から、私にとって安心できる居場所がなかった。
4人の子どもがいるから、家では母は大忙し。父とは喧嘩が絶えなかった。
学校は決められたことをこなす場でしかなかった。変に目立ったらいじめられることもわかっていたから、とにかく大人しく過ごした。放課後にひとりで居残りをすることが、私にとって安らぎの時間だった。
将来も不安だった。
自分のやりたいことがわからず、探し求めた大学時代。国際協力に興味をもつけれど、調べるほど、学ぶほど、関わるほどに自己満足でしかないという結論を、私の中で出さざるを得なかった。
いったい、この世の中はどうなってるんだ?
何が正しくて何が正しくないのか、わからなくなってしまった。
そのまま就職して、社会人になってより不安を募らせた。
自分が不安なのに、目の前の人を安心させることなんてできなかった。
自分に対する不信。
それはいつしか大きな恐怖になって襲ってきた。
そして私は、逃げ出した。
不信不安恐怖に塗りつぶされた現実の中で、息ができなかった。
新卒4ヶ月。
社会人失格だと思った。
人としてどうなんだ、と自分を責めることしかできなかった。
ただただ絶望の真っ只中にいた。
生きることも死ぬこともできなかった、22才夏。
そんなときに出会ったのがNoh Jesu氏だった。
彼は言った。
「アサミは今まで、誰にも愛されずに生きてきたと思っているの?」
なぜか涙が溢れてきた。
そんなことない、そんなことない。
と、心の中で声がするけれど、言葉にならなかった。
彼の言葉がズシリと私の中心深くを圧迫した。
それは紛れもない崩壊だった。
そして真の始まりでもあった。
→後編へ続く