有限を生きる
落とした免許証を親切な誰かが拾ってくれました。
それを警察署に取りに行ったときのこと。
ギリギリ間に合うかな。
現場から事務所に戻り、時間を見て思った。
17:15までと聞いていた。
現時刻16:55。
自転車で20分かかる。
空腹が気になったので、急いでクッキーをつまんだ。
そのままチャリに乗り、道路を飛ばした。
あの道の向こう。
時刻は17:15。
タイムリミット。
ダメもとで受付まで走った。
「もともと遅れる予定でこられましたか?」
受付の男性が大きな目でこちらを見ながら訊ねた。
「間に合うと思ったんですけど。。」
語尾を濁し俯いた。
結果から言えば、時間外ではあったが、対応してくださった。私は、手元に戻った免許証にホッと胸をなでおろした。
10分くらい、まいっか。
心のどこかでそうつぶやく自分の声を聞きました。
でも待って。
その5分、10分が相手にとってどんなものなのか?
「あと10分あれば、もうちょっと丁寧に仕上げられるのに。」
奇しくも私が昼間の現場を終えて話した言葉。
10分あれば、一本前の電車に乗れる。
10分あれば、明日の準備ができる。
5分あれば、一息つける。
5分あれば、メイク直しができる。
5分あれば、大切な誰かに思いを馳せることができる。
10分くらいがどんな濃度なのか。
その10分を作るためにどんな努力をしたのか。
時間を生み出すのは自分自身。
あなたはどんな時を過ごしたいですか?